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著作権トラブルは他人事じゃない!実際の裁判例から学ぶ注意点(音楽編)


2025年6月25日


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 こんにちは、音楽クリエイターの皆さん!

 日夜、素晴らしい音楽を生み出すことに情熱を注いでいらっしゃるかと思います。しかし、そんな創作活動に集中する中で、つい見落としがちになってしまうのが「著作権」の問題です。

 「著作権って難しそう…」「自分には関係ないかな?」そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際に著作権侵害を巡るトラブルは後を絶たず、最悪の場合、裁判にまで発展することもあります。

 今回は、皆さんの身近に起こりうる音楽の著作権トラブルについて、実際の裁判例を基に、どのようなケースで問題になるのか、そしてどのようにすればトラブルを未然に防げるのかを解説していきます。



★なぜ著作権を学ぶ必要があるのか?

 私たちは普段、インターネットやSNSを通じて様々な音楽に触れています。気軽にシェアしたり、アレンジして使ってみたり、生成AIを使ってみたりと…便利な世の中になった一方で、意図せず著作権を侵害してしまうリスクも高まっています。

 著作権は、クリエイターが時間と労力をかけて生み出した作品を守るための大切な権利です。もし、あなたの作品が無断で利用されたり、盗用されたりしたら、どう感じるでしょうか?逆に、あなたが意図せず他人の著作権を侵害してしまったら、思わぬ損害賠償を請求される可能性もあります。

 そうならないためにも、著作権に関する知識は、音楽クリエイターにとって必須の教養と言えます。



★実際の裁判例から学ぶ!こんなケースにご用心!

 それでは、具体的にどのようなケースで著作権侵害が問題となるのか、実際の裁判例を見ていきたいと思います。


事例1:メロディーの類似性 – 「パクリ」と判断されるボーダーライン

 最も多くの音楽クリエイターが気になるのは、「どこまでがセーフで、どこからがアウトなのか」という点ではないでしょうか。特にメロディーの類似性は、著作権侵害を判断する上で非常に重要な要素となります。


【裁判例のポイント】

 過去の裁判では、有名な楽曲と類似性の指摘されたケースが多数存在します。裁判所が著作権侵害の有無を判断する際には、主に以下の点を総合的に考慮します。


  • 依拠性(いかせい) 侵害者が被侵害者の著作物に接する機会があったかどうか。

  • 類似性 楽曲のメロディー、リズム、ハーモニーなどがどの程度似ているか。特に、創作性のある部分(独創的な表現)が共通しているかが重要視されます。

 

 単に似ているだけで著作権侵害となるわけではありません。しかし、楽曲全体を通して、主要なメロディーや特徴的なフレーズが酷似している場合、著作権侵害と判断される可能性が高まります。


【私たちにできること】

  • 過去の作品を参考にする際は、あくまでインスピレーションの源として捉え、安易な模倣は避ける。

  • 完成した楽曲をリリースする前に、他の楽曲との類似性がないか客観的に確認する。(お友達や知り合い、同業者に聞いてもらうのも良いでしょう)

  • 「無意識だった」では通用しないことを肝に銘じる。


事例2:編曲・カバー曲の公開 – 許諾は必須!

 YouTubeやSNSで、人気曲をカバーしたり、独自のアレンジを加えて公開しているクリエイターの方も多いかと思います。しかし、ここにも著作権の落とし穴があります。


【裁判例のポイント】

 既存の楽曲を編曲したり、カバーしたりして公開する場合、原曲の著作権者の許諾が原則として必要です。著作権には「翻案権(はんあんけん)」という権利が含まれており、これは既存の著作物を改変する権利を著作権者が専有していることを意味します。

 過去には、無断で人気曲をカバーして動画サイトに公開し、著作権侵害を指摘されたケースもあります。音楽配信サービスなどでは、JASRACなどの著作権管理団体が管理している楽曲であれば、包括契約によって利用できる場合もありますが、個人が自由にアレンジして公開する場合には注意が必要です。


【私たちにできること】

  • 既存楽曲を編曲・カバーして公開する際は、必ず著作権者の許諾を得る。

  • JASRACなど著作権管理団体の管理楽曲であれば、利用許諾手続きの方法を確認する。

  • 著作権フリーの音源や、利用規約を遵守すれば自由に使える素材を活用する。


事例3:サンプリング利用 – クリアランス手続きの重要性

 ヒップホップやEDMなど、サンプリングを多用するジャンルのクリエイターは特に注意が必要です。


【裁判例のポイント】

 既存の音源の一部を切り取って自分の楽曲に使用する「サンプリング」も、著作権侵害のリスクを伴います。サンプリングは、原音源の「著作権(録音権)」だけでなく、その音源に含まれる「実演家の権利(著作隣接権)」も侵害する可能性があります。

 過去の裁判では、無断でサンプリングを行ったとして、多額の損害賠償を命じられた事例もあります。たとえ数秒の短い音源であっても、著作権者の許諾なしに利用することはできません。


【私たちにできること】

  • サンプリングを行う場合は、必ず「クリアランス」と呼ばれる許諾手続きを行う。これは、原音源の著作権者と実演家の両方から許諾を得る作業です。

  • 著作権フリーのサンプルパックや、利用許諾の得られた有料サンプルライブラリを活用する。



★著作権トラブルに巻き込まれないために

 上記以外にも、歌詞の盗用、デモ音源の無断利用、共作者との権利問題など、音楽著作権に関するトラブルは多岐にわたります。

 大切なのは、「自分の作品は自分で守る」という意識と「他人の作品を尊重する」という姿勢です。

 最後に、音楽クリエイターの皆さんが著作権トラブルに巻き込まれないための具体的なアドバイスをまとめます。


  • 著作権に関する基本的な知識を身につける 著作権法や、著作権管理団体のウェブサイトなどを参考に学習しましょう。

    ※当事務所では著作権セミナーのご依頼も承っております。

  • オリジナル性を追求する 他の作品から影響を受けるのは自然なことですが、あくまで自分らしい表現を追求しましょう。

  • 利用規約をしっかり確認する フリー素材や有料素材を使う際は、必ず利用規約を読み込み、それに従って使用しましょう。

  • 記録を残す 楽曲の制作過程や完成日時などを記録しておくことで、万が一の際に自身の著作権を主張する証拠となります。

  • 困った時は専門家に相談する 著作権に関する疑問や不安がある場合は、弁護士や著作権の専門家に相談しましょう。



★まとめ

 音楽クリエイターにとって、著作権は決して他人事ではありません。むしろ、自身の創作活動を守り、発展させていく上で、最も重要な知識の一つと言えるでしょう。

 今回ご紹介した裁判例は、ほんの一部に過ぎませんが、皆さんの創作活動におけるリスクを理解し、適切な対策を講じるきっかけになれば幸いです。

 安心して、そして自信を持って、あなたの素晴らしい音楽を世界に発信してください!

 
 
 

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