知っておきたい!生成AI利用のリスクとトラブル事例 — 著作権・情報漏洩・名誉毀損を防ぐために 🤖💡
- mstyle0914
- 10月15日
- 読了時間: 5分
更新日:10月16日
2025年10月15日

ブログをご覧いただきありがとうございます。著作権・知的財産権専門の行政書士の松浦です。10月になり日中はまだ、ポカポカな気温ですが早朝や夕方、夜間は半袖だと寒く冬の足跡が聞こえてきますね。それでは、今回の記事は生成AIとトラブルに関する内容となります。
近年、急速に進化し普及する生成AI(人工知能)は、業務効率化や新たな価値創造のツールとして期待が高まっています。しかし、その利用の裏側には、法的なトラブルや訴訟リスクが潜んでいます。
行政書士として、企業や個人事業主の皆様が生成AIを安心して活用できるよう、特に注意すべきトラブル事例と、それらを未然に防ぐためのポイントを解説します。
1. AI利用で起こりがちな3大トラブルとその事例
生成AIに関するトラブルは多岐にわたりますが、特に企業や事業活動において大きな問題となりやすいのが、以下の3つの分野です。
⭐️1-1. 著作権侵害・知的財産権の問題
生成AI、特に画像や文章、音楽を生成するAIは、既存の著作物を大量に学習(機械学習)してアウトプットを生成します。この学習・生成プロセスが、著作権侵害を引き起こす可能性があります。
トラブルの類型 | 訴訟・事例の概要 |
学習データにおける著作権侵害 | 多数のクリエイターやメディアが、自身の作品が生成AIの学習データとして無断で利用されたとして、AI開発企業を提訴する事例(例:米国での画像生成AIに対する集団訴訟)が国内外で発生しています。 ※国内法(著作権法30条の4の1)では、AIなどの技術開発や、そのイノベーション促進を目的に既存の著作物を利用する場合は、著作権が制限されます。 |
生成物の権利侵害 | AIが生成した画像やイラストが、特定の既存キャラクターや作品の「創作的表現」に酷似していたとして、著作権侵害が認められた事例(例:中国におけるウルトラマンの類似画像生成事件)も報告されています。 |
👉 行政書士からの視点:ホームページやパンフレットなどでAI生成物を使用する際は、「既存の作品に似ていないか」「学習データの出所や利用規約は適切か」を必ず確認し、権利侵害リスクをゼロにする努力が不可欠です。
⭐️1-2. 機密情報・個人情報の漏洩リスク
生成AIの多くは、ユーザーが入力した情報を、そのAIの再学習に利用する場合があります。この性質が、企業にとって致命的な情報漏洩につながる可能性があります。
トラブルの類型 | 訴訟・事例の概要 |
企業機密の外部流出 | 従業員が、社内のソースコードや未公開の議事録などの機密情報を、業務効率化のためにAIチャットボットに入力した結果、その情報がAIの外部サーバーに記録され、流出・悪用のリスクが生じた事例(例:韓国の電機メーカーでの機密情報漏洩事件)が有名です。 |
👉 行政書士からの視点:生成AIの利用に際しては、「機密情報や社員の個人情報は絶対に入力しない」という明確な社内ガイドラインを策定することが重要です。情報漏洩は企業の信用失墜や損害賠償につながる重大な問題です。
⭐️1-3. 誤情報(ハルシネーション)による名誉毀損・損害
生成AI、特に大規模言語モデルは、時として事実に基づかない誤った情報(ハルシネーション)を、正しい情報かのように出力される場合があります。この誤情報が、個人や企業の名誉や信用を傷つける問題に発展しています。
トラブルの類型 | 訴訟・事例の概要 |
虚偽情報による名誉毀損 | 生成AIチャットボットが、特定の人物について「犯罪に関与した」などの虚偽の内容を生成・表示したため、その人物が名誉毀損でAI開発企業を訴える事態(例:豪州や米国の地方首長・ラジオパーソナリティによる訴訟)が発生しています。 |
法的書類における誤情報 | 弁護士が訴訟書類を作成する際に、AIが生成した「架空の判例」を引用して裁判所に提出してしまい、その弁護士が制裁を受けた事例も海外で発生しています。 |
👉 行政書士からの視点:生成AIを信用しきってはいけません!生成AIが出したアウトプット(出力データ)は「必ず人間がファクトチェック(事実確認)を行う」ことを徹底しなければなりません。虚偽情報の発信は、名誉毀損や業務妨害として、大きな法的責任を問われる可能性があります。
2. AI関連のトラブルを未然に防ぐための対応策
生成AIのリスクを回避し、その恩恵を最大限に享受するために、企業・事業主が取るべき対応策をまとめます。
⭐️2-1. AI利用に関するルール・ガイドラインの策定
行政書士がサポートできる最も重要な部分です。
「何を入力してはいけないか」:機密情報、個人情報、他社の著作物など、インプットの禁止事項を明確にする。
「どこまで業務に利用できるか」:生成AIの生成物の利用範囲や承認プロセスを定める(例:生成物は必ず上長がチェックする)。
「AI生成物の権利関係」:生成したコンテンツの著作権の帰属先(会社か、従業員か)を明確に定めておく。
⭐️2-2. 「最終責任は人間にある」という意識の徹底
生成AIはあくまでツールです。AIが生成した情報、画像、文章を公開・利用する最終的な判断と責任は、利用した人間(企業)にあります。
ダブルチェック体制:生成AIが出力した内容は、必ず他の情報源や専門知識を持つ人間が裏付けを取り、間違いがないかを確認しましょう。
⭐️2-3. トラブル発生時の対応窓口の明確化
万が一、著作権侵害や情報漏洩の疑いが発生した場合に備え、「誰に相談するか」「どのような手順で対応するか」をあらかじめ決めておきましょう。
特に著作権や情報管理、契約書に関連するトラブルは、行政書士の専門分野です。 生成AI利用規約や契約内容のチェック、情報漏洩防止のための社内規定作成など、専門家のサポートを適切に活用することで、大きなリスクを回避できます。
生成AIは未来を拓く便利なツールである一方で、その利用には常に法的なリテラシーが求められます。





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