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【番外編】地下アイドルと芸能事務所のトラブル事例と、トラブルを避けるための対策

2025年11月24日(月)


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 ブログをご覧いただきありがとうございます。著作権・知的財産権専門の行政書士、松浦です。いつもは許認可申請や相続など、行政書士の専門分野に関する話題をお届けしていますが、今回は少し視点を変えて、「地下アイドルと芸能事務所の間のトラブル」について、いくつかの事例と、そうしたトラブルを未然に防ぐための対策をご紹介したいと思います。


 行政書士としては「契約書」や「権利」に関するトラブル防止という点で、共通する視点があります。



⭐️なぜ地下アイドルと事務所のトラブルが多いのか?


 近年、メディアで取り上げられることも増えましたが、地下アイドルと呼ばれる方々と所属事務所の間では、契約や待遇をめぐるトラブルが少なくありません。主な原因として、以下の点が挙げられます。


① 立場の弱いアイドル側: アイドル活動をしたいという熱意から、契約内容を深く吟味せず、事務所側の提示を鵜呑みにしてしまうケースがあります。


② 契約書の不備・不明確さ: 専属契約期間、報酬体系、活動の制限(SNS利用や恋愛禁止事項など)、活動休止・終了時の取り決めなどが曖昧な「口約束」であったり、書面があっても一方的に事務所に有利な内容になっていることがあります。


③ 未成年者の契約: アイドル側が未成年者の場合、親権者の同意がないまま契約が進められたり、法律に関する知識が不足していることがあります。



⭐️よくあるトラブルの具体的な事例


 地下アイドル業界で実際に問題になりやすいトラブル事例を3つご紹介します。


事例1:不透明な給与・報酬体系


内容:物販(チェキ、グッズ販売)の収益分配率が事前に取り決められていない、または事務所側に極端に有利になっている。「レッスン費」「衣装代」などの名目で、売上から不当に高額な費用が差し引かれ、アイドルの手元に残る報酬がほとんどない。

※費用をアイドル側に求めること自体は問題はないですが、社会通念上妥当な額である必要があると考えます。また、アイドル側と話し合いをした上で、承諾を得る必要があります。


問題点:アイドルがどれだけ頑張っても生活が成り立たず、活動意欲の低下や不信感につながります。契約が請負契約・準委任契約となっていても、実態として労使関係(指揮命令関係)が認められる場合は、労働基準法上の「労働者」に該当するかどうかも争点になることがあり、もし該当すれば最低賃金などの問題も発生します。


事例2:理不尽な活動の制限と罰則規定


内容:「恋愛禁止」を破ったとして、一方的な解雇や高額な違約金を請求される。SNSのプライベートアカウント利用を禁止され、事務所が指定した発信しか許されない。


問題点:私的な生活まで過度に制限したり、干渉する内容は、公序良俗に反するとして、契約の一部が無効と判断される可能性もあります。違約金が損害に見合わない高額な設定になっている場合、法的に無効となるケースもあります。


事例3:契約終了後の活動制限(競業避止義務)


内容:契約終了後も、一定期間(例:1年間)、同業他社や他のアイドルグループで活動することを禁止される。


問題点:アイドルにとって「活動」そのものが職業であるため、この制限が過度に厳しすぎると職業選択の自由(憲法第22条第1項)を侵害する可能性があります。制限が有効と認められるには、「制限の期間」「制限の地域」「守るべき情報(営業秘密など)」が合理的である必要があります。



⭐️トラブルを未然に防ぐための対策

 アイドル側、事務所側、双方が未来を見据えて活動を続けるために、最も重要になるのが「事前の対策」です。


🛡️ アイドル側が確認すべきこと


必ず契約書を要求する: 口約束ではなく、すべての取り決めを書面(契約書)で受け取る。


報酬体系を明確にする: 報酬の計算方法(歩合率、固定給、経費負担の割合)を具体的な数字で確認し、納得いくまで質問する。


不利益な条項を確認する: 「違約金」「専属契約期間」「競業避止義務」など、自分にとって不利になりうる条項は、親や信頼できる第三者、弁護士などの法律の専門家に相談し、内容を理解する。


契約期間と終了条件: 契約期間が何年か、途中でやめる場合にどうなるか、を明確にする。


🤝 芸能事務所側が留意すべきこと


公平性と透明性の確保: 契約書は、事務所に一方的に有利な内容ではなく、社会通念上妥当で公平なものにする。


法令遵守: 未成年者との契約は、必ず親権者(法定代理人)の同意を得て、その証拠を残す。

※未成年者との契約は無効とまでは言えませんが、親権者の同意がない場合は一方的な解約(取消権の行使)のリスクがあるため、必ず同意書等で形に残すようにしましょう。


書面化の徹底: すべての取り決め、特に報酬に関する事項は書面で明確にし、アイドル側に契約書面のコピーを交付する。


労働法規の確認(雇用契約の場合): アイドルが労働者に該当するかどうかを検討し、該当する場合は労働基準法を遵守する体制を整える。



⭐️まとめ


 地下アイドルと芸能事務所のトラブルは、多くの場合、契約内容の曖昧さ権利義務に関する認識のズレから発生します。また、コンプライアンス(法令遵守)意識の欠如、法律知識の欠如も原因の一つでもあります。

 活動を始める前の段階で、双方がお互いに尊重し、しっかりと話し合い、信頼関係を醸成しながら専門家の意見も取り入れて、公平で明確な契約書を作成することが、何よりも大切です。これは、事業の基盤を安定させる行政書士の業務にも通じる、重要なポイントです。皆さまの活動が、不安なく、実りあるものとなることを願っています。



 行政書士まつうら法務事務所では、今回のような契約書・契約書作成に関するご相談や、著作権に関するご相談、クリエイターの支援・サポートしております。お気軽にご相談ください。


※訴訟事案や紛争性のある事案については、お近くの弁護士さんにご相談ください。

 
 
 

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